【内容紹介・目次・著者略歴】
日本国憲法をはじめ世界中で保障される基本的人権.今日われわれは,なぜそれを絶対的に且つ無条件に尊重すべきかという根拠を合理的に説明することができない.本書は,啓蒙時代以降自らを絶対化しオールマイティーとなった理性が,信仰を失ったことで現在どのように懐疑主義にむしばまれ、弱体化してしまったかを,自然法論の歴史を例証に説得的に描きだす.学問と信仰の相違点と共通点を明らかにする必要をとき,両者補い合ってこそ人間は真に豊かな知恵を授けられると語る,ユーモアにあふれた明快な講演.
【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
序言 稲垣良典
目次
第一日 学問の発展と理性
はじめに
言葉遣いと専門用語について
理性とは何か、その働き
理性の邪道
いかにして私たちはものを自然に認識するか
いかにして学問は発展するか
ディコトミーの四種類
各専門分野の方法論のディコトミー
研究されるもののディコトミー――その一、人間とペルソナ
学問の課題になったペルソナ概念の成立
法と道徳というディコトミー
存在と当為、現実と価値
その他、学問の内容に関するディコトミー
法的・社会的制度に関するディコトミーの増加
学問の可能性と限界
第二日 自然法論の歴史における理性と信仰の役割
はじめに
西洋文化における自然法論の登場
自然法(論)の第一段階の「神聖化」
自然法(論)の第二段階の「神聖化」(キリスト教化)
中世神学者とローマ法学者の自然法の異なる理解
理性と信仰を区別したスコラ学者の自然法の捉え方
自然法論の世俗化の最初の徴候
ホッブズの世俗化されていない思想とその自然法(論)
カントの「自然法」イコール「理性法」
理性による「聖」と「俗」の融合(ヘーゲル)
現在の理性の衰弱とその原因
世俗化と理性の衰弱の結果
自然法論は生き残るか
第三日 学問と信仰と人間
はじめに
学問の他に知恵もある
二種類の知識
信仰とは何か
信仰、信頼、信念
信仰と宗教
西洋の法律と法学の内容となったキリスト教的な要素
宗教を対象にする学問
宗教哲学という学問
弁神論と神学
「哲学的信仰」もあるか
日本人の「宗教なしの信仰」
信仰と学問に共通する点
学問に対する信仰の相違点と利点
注
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ヨンパルト,ホセ
1930~2012年。スペイン出身。法哲学者、カトリック司祭。上智大学名誉教授。
ボン大学法学博士号取得。専門は、自然法。
著書に、『法と道徳』(共著)『法哲学入門』『法の歴史性』『法と道徳』(共著)『人民主権思想の原点とその展開』(共著)『カトリックとプロテスタント 』『刑法の七不思議』『人間の尊厳と国家の権力』『法哲学案内』『日本国憲法哲学』『教会法とは何だろうか』『学問と信仰』『道徳的・法的責任の三つの条件』『正義の感覚・理論・実現』『知恵・ユーモア・愛』『人間の尊厳と生命倫理・生命法』『死刑』『法哲学で学んだこと』など多数。