【内容紹介・目次・著者略歴】
秦漢帝国においてすでに相当なレベルに達していた中国の法律・刑罰制度は、三国時代、南北朝時代を経て八世紀の唐王朝でいっそう完成度を高め、東アジア、朝鮮、日本の法制に計り知れない影響を及ぼした。本書は、漢の法制が魏晋南北朝時代に継承されつつ改変され、唐の法制度に至る経緯を法・刑・罪という三つの要素から辿り、その変遷と意味を考察。中国前近代法制度の特徴と展開、中国古代法制と中世法制の相違を明らかにして、中国法制史の体系に独自の視点を提示する。中国律を母法とする日本の律・令の法思想を解明するとともに、日中の法文化の相違、さらには西洋と東洋との相違をも視野において、読者を広い歴史世界へと導く画期的業績。
【目次より】
凡例
序論
第一部 法典
第一章 晉泰始律令への道
I 令と令典
II 漢律の諸問題
III 曹魏の法令
IV 晉泰始律令の成立
第二章 漢律から唐律へ 裁判規範と行為規範
I 出土漢簡に見える漢律とその適用
II 唐律の引用とその実効性
III 漢律から唐律への編文化
第二部 刑罰
第一章 究極の肉刑から生命刑へ 漠~唐死刑考
I 漢代の死刑 その執行様態
II 魏晉の刑罰 棄市刑
III 北朝の死刑 絞殺刑の登場
第二章 徒遷刑から流刑
I 唐の流刑
II 秦漢の「流刑」
III 漢代徒邊刑の刑罰原理
IV 流刑の登場
第三章 笞杖の変遷 漢の督笞から唐の笞杖刑
I 秦漢の笞刑
II 魏晉の笞杖刑
III 北朝の笞杖
第四章 腐刑と宮刑
I 腐刑の新出資料
II 腐刑は反映刑か
III 腐刑の位置
IV 腐刑は、死刑に次ぐ刑罰か
V 肉刑の背景と放果
VI 腐刑、宮刑、淫刑
VII 宮刑の消滅と宦官
第三部 犯罪
第一章 儀礼と犯罪のはざま 賄賂罪をめぐって
I 賄賂罪に隅する唐律の規定
II 漢律に見える賄賂罪
III 漢ー唐における賄賂罪の変遷
IV 賄賂はなぜ罪になるのか 礼物と賄賂の間
第二章 男女間の性的犯罪 姦罪について
I 秦漢律にみえる姦・淫
II 「姦」「淫」の語義
III 分界の変化
IV 禽獣の別
第三箪 「正義」の殺人
I 復讐譚「彼は義士なり」 刺客豫譲の話
II 以後の復贄讀 歴代正史が伝える復讐事件
III 経典と復讐
IV 中国的復讐観の特徴
V 復讐の禁止 儀礼と刑罰
あとがき
英文要旨
英文目次
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冨谷 至
1952年生まれ。古代中国史学者。京都大学人文科学研究所名誉教授。京都大学文学部東洋史を卒業、同大学院博士課程中退。文学博士。専門は、中国法制史、簡牘学。
著書に、『ゴビに生きた男たち 李陵と蘇武』『古代中国の刑罰 髑髏が語るもの』『秦漢刑罰制度の研究』『韓非子 不信と打算の現実主義』『木簡・竹簡の語る中国古代 書記の文化史〈世界歴史選書〉』『教科書では読めない中国史 中国がよくわかる50の話』『文書行政の漢帝国 木簡・竹簡の時代』『中国義士伝 節義に殉ず』『四字熟語の中国史』『中華帝国のジレンマ 礼的思想と法的秩序』『漢唐法制史研究』『漢倭奴国王から日本国天皇へ 国号「日本」と称号「天皇」の誕生』など、
訳注書に、班固『漢書五行志』(共訳注)狩谷掖齋『本朝度量権衡攷(全2巻)』などがある。