【内容紹介・目次・著者略歴】
バンジャマン・コンスタン――19世紀フランス自由主義の代表的論者と目されながら、政治、道徳、宗教、文学など多岐にわたるその思想を総合的に捉えロジカルな構造を解明した研究書はいまだ存在しない。本書では、そうしたコンスタン自身のテクストが持つ多様性と歴史的コンテクストの複雑さを貫く一本の軸として、これまで等閑視されてきた彼のペルフェクティビリテ論に注目する。 共和政、帝政、王政のはざまで揺れ動くフランスにおいて、社会と人間とに透徹した眼差しを注ぎながら、個人の、そして人類の完成可能性に賭けたコンスタンの意図とは何だったのか? コンスタンの思想世界の全体像とともに、それが現実の政治空間でいかなる力と限界とを負っていたか、その「アンビヴァレンス」を見据えることで近代における「政治的なるもの」の姿を抽出する――歴史をより普遍的な主題と結びつけつつ問い返す本書は、思想史叙述の新たな可能性を模索する一つの試みである。
【目次より】
凡例
序論 問題の所在
第一部 問題史的コンテクストとコンスタンの政治思想
第一章 代表観念の歴史的展開と権力の問題
第二章 フランスにおける代表制と人民主権の問題
第三章 コンスタンの政治思想とその理論的構成
第二部 ペルフェクティビリテ論の基底性と統合的作用
第四章 ペルフェクティビリテ論 内面的ペルフェクティビリテを中心に
第五章 ペルフェクティビリテ論の総合的展開
第三部 テクストとコンテクストの交叉における闘争 二つの著作を中心に
第六章 『政治的反動論』を中心に
第一節 コンスタン カント虚言論争
第七章 『征服の精神』を中心に
むすび アンビヴァレンスの残響のなかで
あとがき
注
参考文献
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堤林 剣
1966年生まれ。政治思想史学者。慶應義塾大学教授。慶應義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院政治思想選考ph.D.。専門は、近代政治思想史。
著書に、『コンスタンの思想世界』『政治思想史入門』などがある。