【内容紹介・目次・著者略歴】
行動経済学の発展は、将来における認知諸科学と経済学のさらなる急接近を予感させるものである。しかし既存の行動経済学はもっぱら記述的分析を展開してきた関係上、現代認知科学の哲学的問いかけと既存の経済学の革新をリンクさせることに失敗している。本書はこの反省の上に立ち、認知科学の最先端を構成するエマージェンティストの視点から人間の文脈的認知の問題を考察し、既存の経済学が直面している理論的制約性を超える新たな方法論を構想する革新的野心作。
はじめに
序章
1 見えざる既存の知の壁 2 行動経済学の方法論をめぐって 3 本書の構成
第I部 批判:旅の前夜
第1章 記述論的行動経済学:概説
1 新古典派経済学と行動経済学 2 プロスペクト理論 3 アノマリー現象の記述論的分析 4 フレーミング効果と心の家計簿
第2章 行動経済学の理論的位置づけ:批判
1 呪縛からの脱出をめざして 2 フレーム問題について 3 ヒューリスティックスの分析:批判的検討 4 新古典派理論は規範理論たりうるか
第II部 模索:古い世界観からの旅立ち
第3章 自由論の再検討
1 新たな問題の提起 2 選択の自由:批判的考察 3 ハイエクの認識論・自由論
第4章 自由論の深化:内発性の考察
1 多相的な自由 2 自由の主体的条件 3 内発性とは何か:批判的展望 4 内発性研究の理論的意義 5 再説:人間=「マシン以上のもの」
第5章 能動性と意識ある心の起源
1 問題設定 2 アフォーダンス理論:展望 3 心物二元論を超えて 4 意識ある心の起源
第6章 意識ある心の機能
1 進化論的考察へ 2 内なる目と「天性の心理学者」 3 ドーキンスのミーム論 4 文化心理学的考察
第III部 見えてきたもの:旅の効用
第7章 社会的自我:意識の社会性と情報的機能
1 思索の旅のまとめと効用 2 ミー ドの社会的自我論 3 参照点依存型意思決定の認知的原型
第8章 自我と文脈的理性
1 文脈的理性と人間的賢さ:再論 2 理由に基づく選択モデル 3 社会的自我を原型とする意思決定理論
第9章 公正の経済モデルと行動経済学の立て直し
1 個人行動と個人間調整メカニズムの理由づけ 2 公正の経済学:批判的展望 3 公正概念と経済社会の調整メカニズム 4 行動経済学の立て直し:公正概念とプロスペクト理論
付論 認知脳科学の発展とニューロ・エコノミクス展望と批判
まとめとして:経済学の新しい展開をめざして
参考文献
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中込 正樹
1950年生まれ。経済学者。青山学院大学経済学部教授。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。専門は、行動経済学。
著書に、『意味と人間知性の民俗認知経済学』『経済学の新しい認知科学的基礎』 『事業再生のマクロ経済学』 『意味世界のマクロ経済学』 『フラクタル社会の経済学』 『都市と地域の経済理論』『不均衡理論と経済政策』などがある。