【内容紹介・目次・著者略歴】
ひとは、場所に教えられる。パリの街角で、文人や芸術家の筆音に耳を傾ける著者は、人里離れたトルコ南部の松林でローマ土器のかけらと出会い、村人の暮らしに想いを馳せる。皇帝ユスティニアヌスが帝都コンスタンティノープルに収集させたギリシャ古典群に学び、コペルニクスがイタリアで学んだギリシャ古典の来歴をたどろうとする。それは、ときと場所に縛られて生きるわれわれにとって、時空の交差点をめぐる旅となった。ビザンツ研究に始まる著者の「旅」は、国民国家の枠にとらわれない歴史と現代を巡る往還となる。その道すがら、ヨーロッパ=地中海世界の各地に、個性ある文化と歴史をたずねた。簡潔な文体で伝える「旅」のエッセイにして、興趣あふれる旅の手引き。英独仏に視野が限られがちなヨーロッパ観を、ローマ帝国および、アラブ・イスラム世界をも含んだビザンツ帝国へと導き、未知のヨーロッパ像を提示する。西洋史はもちろん、現代EUの課題を考える際にも豊かな示唆を与えよう。『創文』連載を全収録。
【目次より】
目次
I 文化の回廊
共生する空間
共鳴する魂
日溜まりの祝福
凜と聳える
平和の祈り
緋色の誓い
文化の回廊
女神の加護
集いの緑蔭
地上花あり
咲き映えり
仰ぎ見る峰
聖ニコラオスの島
II 聖者の祝福
聖者の祝福
憩う海辺の時
谷に翔る風
祝祭の広場
新緑の都で
異邦の民に
カロゲロス
聖堂の傍らで
継がれる想い
祈りと加護
フィロビブリ
III 帝国と慈善
ディダスカロス
境域に生きる
帝国と慈善
休息と安寧
馬上のキス
帝国の統治について
アンナの想い
燦然と
烈日のもと
秋霜に生きる
天への階梯
IV 大地の相貌
自然を友に
池の畔の蛙たち
地域を描く
大地の相貌
神々の山裾に
逸楽と超俗
コーラを想う
ブレヒ!
灯明の残り香
村の生活
満点の星々に
V 歴史の軌道
コペルニクスの転回
平和の架け橋
描かれた紫衣
揺るがぬ矜恃
時空の座標
時を刻むなかで
アクイレイアの残照
豊かな共生
エビデンス
歴史の軌道
オイノペドン
広場の平和
都市と慈善
大王の遺風
文化を運ぶ石畳
共鳴する偉業
富知のネクサス
地図
あとがき
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大月 康弘
1962年生まれ。 歴史学者、経済学者。一橋大学大学院経済学研究科教授。専門は、東ローマ帝国史、ヨーロッパ経済史。
一橋大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了、同大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。経済学博士。
著書に、『帝国と慈善 ビザンツ』(日経・経済図書文化賞)『ヨーロッパ 時空の交差点』
『コンスタンティノープル使節記』(リウトプランドの原文全訳+註および論文)
訳書に、ピエール・マラヴァル『皇帝ユスティニアヌス』ベルナール・フリューザン『ビザンツ文明』マガリ・クメール/ブリューノ・デュメジル『ヨーロッパとゲルマン部族国家』(共訳)などがある。