【内容紹介・目次・著者略歴】
これまでガラテヤ書研究とパウロ研究一般は思想史研究という領域に限定されて行われてきた。本書は、アイデンティティ形成の文脈と実践的諸相に着目し、パウロとユダヤ教あるいはユダヤ人キリスト者のあいだで共同体アイデンティティの形成に関する期待がいかに異なっていたかを分析し、またバプテスマ、聖霊顕現体験、遺物としての書簡が共同体アイデンティティ形成に果たした役割を明らかにする。アイデンティティ理論と境界性理論を積極的に用い、また種々の歴史的宗教共同体との類例的比較をとおして、いかにパウロが独自の共同体アイデンティティ形成を試みたかをテクストの内から読み取り、宗教の実体に注目する社会科学的批評学を通してガラテヤ書を考察した画期作。
【目次より】
緒言
叢書・雑誌等の略語
序論
第1部 共同体アイデンティティ形成
第1章 社会学・人類学的理論的枠組み
第2部 ガラテヤ共同体におけるアイデンティティ形成の文脈
第2章 パウロとインストゥルメント型の共同体アイデンティティ形成(ガラ1.11-24)
第3章 第二神殿期ユダヤ教における異邦人編入
第4章 エルサレムとアンティオキアにおける対立関係と共同体アイデンティティ形成(ガラ2.1-14)
第3部 ガラテヤ共同体におけるアイデンティティ形成の実践的諸相
第5章 アブラハムと共同体アイデンティティ形成:サラ・ハガル物語の読み直し(ガラ4.21-31)
補遺 ガラテヤ信徒の宗教的感性とアイデンティティ形成
第6章 バプテスマと共同体アイデンティティ形成:定式文三対構成の発展と機能(ガラ3.27-28)
第7章 聖霊と共同体アイデンティティ形成:アイデンティティの二面性に関する考察(ガラ5.1-6.16)
第8章 書簡と共同体アイデンティティ形成:アイデンティティの場としての文書共有(ガラ6.11)
結論
参考文献
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浅野 淳博
1960年生まれ。宗教学者。関西学院大学神学部教授。明治大学商学部商学科卒業、フラー神学校にて神学修士号取得、オックスフォード大学にて博士号取得。
著書に、『新約聖書の手引き』(共著)『聖書的宗教とその周辺』『ガラテヤ共同体のアイデンティティ形成』『古代世界におけるモーセ五書の伝承』(共著)など、
訳書に、J.D.G.ダン『使徒パウロの神学』リチャード・ボウカム『イエスとその目撃者たち目撃者証言としての福音書』『イエス最後の一週間』『ヨセフスと新約聖書』 などがある。