【内容紹介・目次・著者略歴】
中国文学史において中唐は、文学に対する意識や価値観が大きく変容した、中世から近世への転換期である。文学観・世界観・処世観、また個我意識の表出や伝統との距離などの諸相を、歴史学的叙述に頼ることなく、文学に則し考察する。文学の規範性・担い手・影響関係を視座として、通史的観点から中唐に新たな定義を与え、後の中国古典詩歌の二大規範「唐音」「宋調」へと進展する視野を開く文学史研究。作品中の自然観への着眼は思想史への関心も促す。第一回吹野博士記念賞受賞。
【目次より】
中唐文学研究序説
第I部 大暦から元和へ
第一章 大暦から元和へ 「中唐」の文学史的意味
第二章 劉長卿詩論 長洲県尉時の左〓を中心に
第三章 韋応物詩論 屏居の位相を中心に
第四章 「王孟韋柳」評考 「王韋」から「韋柳」へ
第II部 韋応物と白居易
第一章 韋応物と白居易
第二章 諷諭詩考 韋応物の歌行・雑体詩の影響を中心として
第三章 閑適詩考 「閑居」から見た閑適の理念
第四章 白詩風景考 「竹窓」と「小池」を中心として
第III部 諷諭詩の系譜
第一章 中唐詩壇諷諭詩の系譜
第二章 張王楽府論
第三章 送寒衣 唐詩「送衣曲」をめぐって
第四章 元〓の文学理念 元和五年を中心に
第IV部 謫遷と文学
第一章 劉禹錫の謫遷と文学 朗州司馬期の寓言文学を中心に
第二章 劉禹錫の賦について
第三章 孟郊論 仕官前の恬淡と執着第
V部 周辺からの照射
第一章 中唐における「吏隠」について
第二章 郡斎詩について
第三章 大暦期の聯句と詩会
第四章 中唐の「意境説」をめぐって
あとがき
初出一覧
英文・中文要旨
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赤井 益久
1950年生まれ。中国文学者。國學院大學名誉教授・前学長。文学博士。専門は唐代文学、中国古典語法。早稲田大学第二文学部東洋文化専修卒業、國學院大學大学院文学研究科博士課程後期満期退学。
著書に、『中国山水詩の景観』『中唐詩壇の研究』『唐代伝奇小説の研究』『新釈漢文大系 詩人編 8 韓愈・柳宗元』などがある。