ライバル企業と競争するだけでなく、お互いに得となるような協力関係を築く戦略は、一考の価値がある。しかし落とし穴も多い。そもそもライバル企業同士の協調は、談合・カルテルとして処罰されるリスクを伴う。そこで米国反トラスト法の違反事例をひも解きながら、合法的な協調戦略の可能性を探りたい。もう一つの落とし穴は、協力相手が将来強力なライバルに成長するリスクだ。この問題について豊富な示唆を与えてくれるのが、急速なイノベーションと首位交代が進んだ液晶パネル業界である。「お家芸」であった液晶分野で、なぜ日本メーカーは韓国・台湾企業に敗れたのか。産業経済学を専門とする筆者が、競争と協調の本質を明らかにする。
*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2021年5月号)』に掲載された記事を電子書籍化したものです。