川口と有賀は、予科練上りの米軍通訳という経歴も同じだったし、年齢・性格も似かよっていた。粗暴な米軍人に対する共通した反感が惹き起したある事件を契機に芽生えた友情は、お互いの体内に欝積していく若さと可能性の残滓を確認しあうことで、さらに強固なものとなっていった。二人の若者にとって、未知の可能性はアメリカにしかないもののようであった。綿密な計画がたてられ豪華船に忍び込んだ二人は、満月のハワイ沖で、デッキから相次いで海中に身を躍らせた……。既成社会のモラルの中で、なお若者のエネルギーの純粋性を主張する、著者の野心作5篇を収録。