日出づる国、日ノ本はいかに興ったのか。
遥か昔。民のためにその身を捧げ、長く苦しい旅に出た若者がいた。
まだ日本が日本でなかった時代。日向の里の跡継ぎ・彦火火出見(ヒコホホデミ)は、天災で農地が深刻な被害を受け、各々の里が争い合う現状に心を痛めていた。耐え忍び、助け合え、とただ語り掛けるだけで果たして皆を救えるのだろうか。自らが行動し、未来を示してこそ多くの民を救うことに結び付くのではないか。火火出見は、よき理解者である長兄・五瀬(イツセ)、武芸に長けた次兄・稲飯(イナヒ)、稲作の名人である三兄・三毛入野(ミケイリノ)らとともに理想郷として伝わっていた「豊葦原」への旅を決意する。豊葦原で、人々を束ねる国を作り、民を導くことこそ己の使命だと信じて。
気鋭の歴史作家が、大胆な着想とアプローチで迫った「神武東征録」。
『古事記』『日本書紀』をベースに、立国の礎を描いた歴史スペクタクル巨編!