私たちは、家族になれるのだろうか。
故郷に帰った私を待っていたのは、母の駆け落ち相手の息子だった。
『後宮の烏』の著者が創る家族再生の献立(レシピ)。
母がわたしと家を捨て駆け落ちしたのは、小学校の卒業式の日だった。旧家の九重家で厳しい祖母に育てられたわたしは、大学入学を機に県外へ出た。とある事情で故郷に戻ると、家にはあの頃と変わらぬ頑迷な祖母と、突如居候として住み着いた母の駆け落ち相手の息子が。捨てられた三人の奇妙な家族生活が始まる。
伝統に基づく料理とともに紡がれる、優しくも切ない家族の物語。