「ミス・ダニエルズ、息子の居場所を教えてもらおう」男性は画廊に乗り込んでくるなり、テスにそう言った。目にはあからさまな敵意が浮かんでいる。三日前イタリアに来たばかりのテスには、何がなんだかわからなかった。義妹アシュリーに頼まれ、一時的に画廊の店番をしているだけなのだ。テスがそう説明すると、彼はとんでもないことを言いだした。アシュリーが彼の息子を誘拐したというのだ!いくら自由奔放な義妹でも、そんなことをするはずがない……。突然の出来事に狼狽したテスは、彼の目に敵意以外の光が浮かんだことには気づかなかった。