たとえ私の姿が見えなくとも、この想いは彼に届くだろうか。
集中治療室で働く看護師のエリーズは、事故で重傷を負ったデーモンを担当することになった。有名な大企業を牛耳る社長だというが、今はその端整な顔も腫れ、全身を管につながれて、昏睡状態だ。見舞いの家族も来ない彼に寄り添い、耳元で懸命に声をかけるうち、エリーズの心にはいつしか、特別な感情が芽生え始めていた。だめよ、私情を挟んだりしちゃ。そう自分を戒めた矢先、ついにデーモンが意識を取り戻す――視力が失われた状態で。やがて、看護師が同伴するという条件で退院を許された彼は、ためらうエリーズを連れて、湖畔の別荘へ向かい……。
■かつて信じていた人に手酷く裏切られたことで心に傷を抱える白衣の天使。彼女が孤独な大富豪の耳元に語りかけた言葉は、眠る彼の耳に届いていたのでしょうか? 初版時に爆発的に売れた、HQディザイアを代表するA・ブロードリックの名作。