ふとどきで美しい伯爵の、温かな腕にさらわれて……。
「私の純潔と引きかえに、弟の土地を返していただけないかしら?」遊び人と名高い伯爵ガブリエルに向かって言葉を絞り出した瞬間、きまじめな令嬢キャロラインの頬は燃えるように熱くなった。賭事に負けた父のせいで、愛する弟の未来が奪われるなんて耐えられない。そして私も、悲惨な結婚をさせられる前に一夜だけでも夢を見たい……。「話はわかった。だが僕も、処女を金で買うほど落ちぶれてはいない」軽くあしらわれて追い返されたキャロラインだったが、残忍で醜い中年男との結婚は刻一刻と迫ってくる。すべてを諦めかけたある日、父が道楽で雇った僧衣の詩人が現れた。キャロラインだけはすぐに気づいた――彼がガブリエルであることに。
■ガブリエルに導かれて父の手を逃れ、地味な家政婦に変装して田舎の屋敷に隠れたキャロライン。平穏な日々もつかの間、ふたりでいるところを父に見つかり、ガブリエルは大混乱のさなかに愛なき結婚を申し出て……。甘く儚い愛の夢、〈不肖の四貴族〉最終話です。