無邪気な青い情熱を、彼はこっぱみじんに打ち砕いた。
半年前、両親を事故で失って以来、クロエの人生は一変した。父母が築きあげた化粧品会社を、ニコが引き継いだのだ。なぜ父は遺言書で、私ではなく彼を後継者に指名したのだろう。確かにニコは父の亡き親友の息子で、これまで実子同然の援助を与えられてきたけれど、いくらなんでもあんまりよ。クロエの脳裏に10年前の苦い思い出がよみがえった。地味で奥手な18歳の彼女を励まし、自信を与えてくれたニコ。だが無垢な身を捧げたとたん裏切り、冷酷に立ち去ったのだ。もうこれ以上彼に奪われてはだめ。そう、心までは……。
■リアルな現代の男女の機微を、クラシックなハーレクイン・ロマンスにうまく落とし込んだ恋物語を得意とするジェニファー・ヘイワード。今作も彼女の筆致が冴えわたります。お見逃しなく!