◆父と継母が飛行機の墜落事故で、世を去ったとき、19歳のメルに遺されたのは、3人の弟と莫大な借金だけ。弟たちを人手に渡さないためにも、海運造船業を営む大資産家で、継母の弟エティエンヌの求婚を、メルは受けるしかなかった。メルは15歳のときに、彼に仄かな思慕を秘めていたことがある。しかし、一回りも年上の、成熟した大人のエティエンヌは、男の子みたいな、痩せっぽちのメルに見向きもしなかったのだ。それなのに結婚式の夜、怯えるメルをベッドの端に座らせ――その微笑が語っていた。彼はメルを我が物にしたいだけなのだと。