◆最愛の父が心臓発作で倒れた。悲しみに暮れるなか、ケイトリンは病床の父にショッキングなことを命じられた。父の経営する会社の危機を救うため、自分の右腕であるグラントと結婚しろというのだ。グラント――男らしさの塊といったタイプで、初対面からずっと私を無能あつかいしてきた失礼きわまりない男。でも、死の床にある父を喜ばせるためならなんでもしよう。覚悟を決めたケイトリンだが、ただ一つ心配なことがあった。形ばかりの結婚とはいえ、周囲を納得させるにはグラントと夜をともにしなければならないのだ。この種の経験がないことを、自信満々の彼には絶対に悟られたくない。ケイトリンは震えをこらえながら、ベッドルームに足を踏み入れた。