アメリカではいま、生産性の低下、雇用創出の減少、賃金水準の伸び悩み、国際貿易と国際投資の減少など、競争力の低下を示す兆候が目立つ。これは景気循環による一時的苦境ではなく、より深刻で構造的な問題である。グローバル化による選択肢の増加、企業や政府の短期志向、圧迫を受ける中流層、有効な施策を打てない政府などが相まって、アメリカは悪循環に陥っている。
これらは政財界のリーダーが招いた人為的結果であり、克服不能ではない。起業家精神、高等教育制度、経営品質の高さ、オープンで民主的な社会や仕組みなどアメリカ独自の強みは健在であり、経済全体は依然として活発で復元力も備わっているからである。
競争力を取り戻すためには、現実と向き合い、政府も企業も労働者も積極的に関与して、共通の利益のために行動する必要がある。特に、長期的な生産性の向上に必要な個人、インフラ、イノベーション、制度への積極投資が不可欠である。
*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2012年06月号)』に掲載された記事を電子書籍化したものです。