◆シリーニは一人庭園のベンチに座り、ただ時が過ぎるのを待った。
父の政敵の資金集めパーティーにもぐりこんものの、命じられたとおりにスパイ行為を働く気にはなれなかったのだ。
「君は幽霊ではないんだね?」振り返ると、タキシードに身を包んだすてきな男性がいた。
男性はこのホテルの庭園に出るという幽霊の話を皮切りに、歴史や伝説を語り、心から楽しませてくれた。
やがて二人はあらがえぬ魔力に導かれるように踊り、口づけをする。しかし男性の名を聞いたとき、シリーニは慄然とした。
アダム・ダンフォース? 彼が政敵の息子だったなんて!