あらすじ◆灼熱の太陽、猛烈な砂嵐――そこはまさしく地獄だった。石油会社のオーナーの娘ダイアンは、アラブ人によって誘拐され、ラシュダニ国の首長カリムに救出されて敵の砦から逃げ出した。だが果てしなく続く砂の世界で、ついに水も食料も底をついた。「もう……だめ。わたしさえいなければ……」「アラーの神の名にかけて、ぼくは必ずきみを助ける」宗教も習慣も違う砂漠の男の黒い瞳が、ダイアンの胸を射抜く。わたしは死ぬ。せめていま、生きている手ごたえが欲しい――ダイアンは生涯最後になる夜を、その異国のシークに捧げた。