ヘイゼルは3年ぶりの帰郷を前に、苦い過去を思い返していた。
レイフ・サヴェッジ――コーンウォールの古い館に住む大地主。
ヘイゼルが10歳のとき父が亡くなり、彼女はその館に引き取られた。
恋を夢見る年頃になって、ヘイゼルはレイフをヒーローに見立てた。
18歳の誕生日の夜、自らレイフに身を捧げ、ふたりは夢のような
一夜を過ごした。なのに翌朝、彼は態度を一変させたのだ。
以来、ヘイゼルはアメリカに渡り、彼を避けて生きてきた。
いまになって、後見人であるレイフから帰国を命じられるなんて。
あのときと同じ、彼の本心は見えないまま……いいえ、
おとなの女性として、今度こそ彼と向き合えるときが来たんだわ。