両親を亡くし、砂漠の国ジャザールに住む叔父に引き取られたゾーイは、
因習に縛られた国で奴隷のようにこき使われて暮らしながらも、
故郷に帰って医療を学ぶ夢をひそかにはぐくんでいた。
そこへ突然、シーク・ナディールとの政略結婚話が持ちあがった。
彼は野獣と呼ばれる残忍な男で、最初の花嫁を初夜に突き返したという。
すべては支度金に目が眩んだ叔父の企みだとゾーイにはわかっていたが、
儀式の隙をついて国外脱出する可能性にかけるしか、彼女に道はなかった。
迎えた結婚式当日、ナディールに初めて対面したゾーイは衝撃を受けた。
苛烈さの中にも人を引きこむ魅力を持った彼に、ひと目で惹かれたのだ。
夢を忘れてはだめ! ゾーイは揺らぐ心をきつく戒めた。