固い決意を胸に、砂漠の国ハジャールを訪れたカタリーナ妃は、宮殿のさびれた様子に呆然と立ち尽くした。室内は暗く静まり返り、人影はまばらで、みな暗い顔をしている。5年前のあの事件以来、民衆には決して姿を見せぬまま宮殿の奥にこもって国を治めているというザーヒルのせいだろうか。顔に傷を負った孤独なシーク、“ハジャールの野獣”と恐れられる彼に、カタリーナはすがらなければならない運命にあった。自国は今、王である父が病に倒れ、内乱の危機にさらされている。彼女の美貌をもってザーヒルと結婚し、国を守ってもらわなければ。だが彼は氷のように冷たい一瞥をくれ、言った。「妻など欲しくない」■昨年のデビュー以来多くの作品を書き、人気急上昇中のメイシー・イエーツが、プリンセスとシークが織りなす新感覚の『美女と野獣』物語を書きました。