【内容紹介・目次・著者略歴】
13世紀、聖書解釈や神学者の注解を体系的に集大成した全45巻からなる中世キリスト教神学の金字塔。第III部 第27問題~第30問題を収録。
キリスト教に関わる事柄を初学者のために論述した、西洋中世思想を代表する必読文献。本巻は聖母について扱う。トマスの聖母論の基本原則は、「聖母はキリストとの関係においての外は理解できない」であると言える。彼は神学者として、当時広く流布していた聖母に関するロマンティックな伝説や神話を警戒し、自らの聖母論を何よりも聖書のテクストの歴史的・字義的な意味に即した解釈の上に構築することを試みているが、一方で、そこには聖母を愛する詩人としての声も同時にまじっているのである。40頁に及ぶ訳者解説ではアウグスティヌス、アンセルムス、ベルナルドゥスなど教父思想からの影響を考察、またトマスの一連の著作における思索を辿ることで『神学大全』の聖母論を特徴づけて、読者の理解を導く。
【目次より】
まえがき
第二十七問題 至福なる乙女の聖化について
第一項 神の母である至福なる乙女は母胎からの誕生の前に聖化されていたか
第二項 至福なる乙女は理性的霊魂の注入の前に聖化されたのであるか
第三項 至福なる乙女は邪欲の汚れから潔められていたか
第四項 至福なる乙女は母の胎内での聖化によってすべての自罪から保全されたか
第五項 至福なる乙女は母の胎内での聖化によって恩寵の満ちあふれを取得したか
第六項 母の胎内で聖化されることは、キリストについで、至福なる乙女に固有であったか
第二十八問題 神の母の処女性について
第一項 神の母はキリストを懐胎するさいに処女であったか
第二項 キリストの母は出産において処女であったか
第三項 キリストの母は出産の後処女であり続けたか
第四項 神の母は処女性を誓願したか
第二十九問題 神の母の婚約について
第一項 キリストは婚約した乙女から生まれるべきであったか
第二項 マリアとヨセフとの間には真実の結婚が成立していたか
第三十問題 至福なる乙女への告知について
第一項 至福なる乙女にたいして何事が彼女のうちで為されようとしていたかが告知されることは必要であったか
第二項 至福なる乙女にたいする告知は天使によって為されるべきであったか
第三項 告知する天使は乙女にたいして目に見える姿で現れるべきであったか
第四項 告知は適当な順序で完成されたか
訳者注
解説 トマスの聖母論
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トマス・アクィナス
1225頃~1274。スコラ学の代表的神学者。ドミニコ会士。アルベルトゥス・マグヌスに師事し、パリのドミニコ会神学校の学長を歴任した間に『神学大全』を完成した。