あらすじ妖美なる陰影を刻む宝石譚、連作完結篇。4部作54篇の賑わしい色彩ーーきらびやかな宝石の匣(はこ)。だが開けてみると、肝心の宝石は消えうせ、赤い絹布の窪みだけが残っている。この匣は、虚とか不在と名づけられるべき、天与の贈りものであろうか。戦争の傷をその後の人生に刻した三姉妹を美しい宝石箱の虚になぞらえ、妖美壮麗の小説世界を築く幻想文学の傑作。連作「とらんぷ譚」4。 ◎「時代が新しいいがたに人をはめこもうとする時、その型どおりにならない異形の者もまた、あらわれる」<鶴見俊輔「解説」より>