利ザヤで稼げた伝統的銀行モデルは崩壊、新型コロナ禍が追い打ちをかけるいま、変わろうとしない地方銀行、信金信組に未来は開けない。すでに変革を進め、実を結びつつある、山形県、長野県、沖縄県、北海道などの実例を紹介する。地域を元気にする、中小企業を助ける以外に地方銀行員が生き残る道はなく、一方で、地銀再生の可能性がまだまだあることを、本書は教えてくれる。
バブル崩壊後の金融破綻で、銀行は企業のリスクから逃げ続けてきた。本来の銀行員は「消えた」のだ。
氷見野良三新金融庁長官は、金融機関に企業のリスクを分担することを強く求める方針を打ち出しつつある。コロナ危機にあえぐ中小優良企業を、リスクを分担して救うことこそ地域金融の役割であり、苦しむ地銀自らを救う唯一の道でもあるのだ。
本書は、徐々に固まっていく新金融庁の方針をスクープレポートする。そして、すでにこの方針を先取りするように動き出している地域金融マンの姿を日本中から紹介する。
面白いのは、これらの金融マンが「地域金融変革運動体」、略称「ヘンタイのカイ」という緩いネットワークで連携していることだ。ヘンタイのカイは、金融マンたちの「心理的安全性」が保たれたネットワークでもある。
遠藤俊英前金融庁長官時代に始まり氷見野良三新長官にも引き継がれる金融行政のキーワード「心理的安全性」(Psychological Safety)は、一見地味だが実は地方銀行はじめとする金融機関が大波を乗り越え、生き残るためには、「じぶんごと」として理解しておかなければならない考え方だ。
金融機関は、顧客(個人にも事業者にも)に対して「心理的安全性」を与えるビジネスをするべき存在だ。
金融機関は、そこで働く人にとっても「心理的安全性」を与える組織でなければならない。
金融庁は、金融機関に対して「心理的安全性」を顧客に与えているかどうかを重要な審査基準とする。
金融機関や元金融マンによる新しいかたちの企業支援が、いま地方でいくつも芽生えている。
その担い手は多くの場合「変人」だが、「心理的安全性」を確保して、常識を超えていく。そして彼らの多くはゆるやかなネットワークでつながっている……。新型コロナ禍以後、「地域の金融」はどう変わるのか、変わらざるを得ないのか。
累計30万部、『捨てられる銀行』シリーズの決定版。コロナ後の地域金融と地方再生に携わるすべての人のヒントとなる!