さっと読めるミニ書籍です(文章量14,000文字以上 15,000文字未満(20分で読めるシリーズ))
【書籍説明】
わたしが勤めていた障害福祉事業所には、自閉症の程度はグレーゾーンですが、学習障害を抱えている子がいました。
ある程度のことは自分でできるし、会話も問題ない、むしろ自分より重度の自閉症の子の面倒を見てくれるような子でした。
ただ、学習になると、頭を抱えて動かなくなってしまうのです。
ただ勉強が嫌いなだけなんだと、スタッフもあまり気にすることはありませんでした。
学習の時間にその子は、いつも算数の宿題はやりますが、国語の宿題は断固としてやろうとしませんでした。
「家でお母さんとやるからいい」と。
そんなことが続いていたある日、お母さんから「宿題をやる時間って短いですか?」と質問がありました。
どうやら、いつも国語をやらずに帰ってくることを気にしているようでした。
そこで、スタッフが経緯を話すと、「そうだったんですね。国語の宿題は家で一緒にやってるんですけど、いつも文章を自分で読まずに読んで欲しいと言うんです。」とのお話しでした。
その子は、「馬鹿だから字が読めない…」と話してくれました。
字が読めないことで自信をなくし、恥ずかしいとさえ思っているようでした。
その子は少し前から気付いていたようなのです。
「なんで自分はみんなみたいに本が読めないんだろう?」と。
そして、こうも言いました。
「読んでくれたらわかるんだけどな…。」
こんなふうに人知れず悩み苦しんでいる人もいるのです。
障害であることがわかってショックを受ける人が大半かもしれませんが、障害であることがわかって腑に落ちる人もいます。
「努力が足りないからではなかったんだ。」と心が救われることもあります。
原因がわからず、「なぜ自分だけできないんだろう」「頑張っているのに…」と、ストレスを抱えていることの辛さは計り知れません。
今回は、発達障害の中でも見えにくい障害である「学習障害」について取り上げ、身近にいる“困っている人”の困り感を共有できたらと思います。
人知れず悩み苦しんでいる人に、温かい支援の手が届きますように。