二十四年間、父だと信じてきた男性が赤の他人であることを知り、エレナはたまらずに家を飛びだした――行く先はシカゴ。そこには実父についての手がかりを与えてくれる人物が、シカゴの支配者ラッキー・マサードがいるのだ。強さと優しさを兼ねそなえた彼には美女たちがこぞって身を投げだすという。もちろん私は情報をもらうだけ。彼の魅力に屈したりはしないわ。だが、エレナの思惑は外れた。会うなり、ラッキーの腕に包まれ、底知れぬ深い瞳に魅入られて、彼女は気づかぬうちに哀訴していた。父の名前を教えてくれたら私のすべてを奪っていい、と。