わたしからはじまる魂の再生の物語。
読みながらいっしょに沈んでいく。
壊れそうになる。
最後に、極微の勁(つよ)い光に射ぬかれる。
――鷲田清一さん(哲学者)
繊細な、こわれものとしての「悲しみ」を、
粗略に扱わない社会のために、
静かに読まれるべき一冊
――平野啓一郎さん(小説家)
上智大学グリーフケア研究所非常勤講師として、
悲しみにある人々に寄り添う活動を続けている
著者の入江杏さんは、2000年に起きた
「世田谷事件」の被害者遺族です。
隣に住む、愛する妹家族を失った悲しみは、
6年もの間、語られることはありませんでした。
語りにひらかれたきっかけについて、まえがきにこうあります。
心ない報道、周囲からの偏見と差別、沈黙を強いる母への抵抗……
わたしは語りへと突き動かされ、無我夢中で心の断片を拾い集めました。
そのかけらから恥を洗い流してみると、そこには透き通った悲しみが顕れました。
――まえがきより
“被害者遺族はこうあるべき”といった世の中の「大きな物語」に抗い、
「わたしの物語」を取り戻し、魂の再生へと向かう軌跡の書です。