「俺のあん娘」はもうひとりいた――。
タバコ好きで、いつもプカプカ吸っている奔放な女性に恋する男の心情を歌ったヒット曲『プカプカ』。これまで50人を超えるアーティストにカバーされ、リリースから半世紀を経た今も多くの人に歌い継がれるこの名曲を生み出したのは、関西出身のシンガーソングライター・西岡恭蔵だった。
『サーカスにはピエロが』『君住む町に』『春一番』といった関西フォーク史に刻まれる定番曲、細野晴臣プロデュースによる『街行き村行き』やNHK「みんなのうた」で放送された『バナナ・スピリット』など、ファンに愛され続ける名曲は数えだしたら切りがない。矢沢永吉のスタンダード・ナンバーである『トラベリン・バス』や『A DAY』『あ・い・つ』などの作詞を手掛けたことでも知られている。
誰にも真似できない独自のサウンドを生み出した西岡恭蔵は、しかし、1999年4月に50歳という若さでこの世を去った。あまりに突然の訃報に言葉を失った友人・知人も多く、これまで1冊の評伝も出されていなかった。
本書は、その初めての本格評伝となる。
『プカプカ』誕生にまつわる“謎”の数々。
三重・志摩の海を見て育った少年時代の音楽的原点。
「君住む街」大阪へ出てから経験した初めての恋。
関西フォークの聖地・喫茶店「ディラン」での日々。
東京でのレコード・デビューと作詞家KUROとの結婚。
中米からアフリカまで世界中を旅して作ったラブソング。
創作に懸ける情熱と苦悩、最愛の伴侶KUROとの別れ。
そして、「ゾウさんとKURO」を支え続けた仲間たち――。
“不世出のシンガーソングライター”の知られざる生涯が、いま明かされる。