「ああ、沙織は、一体、どうすればいいのっ」、誘拐、凌辱、緊縛……美しき社長夫人が禁断の悦びにすすり泣く。
不動産会社社長の南原耕作には、誰にも言えない悩みがあった。
30以上も歳の離れた後妻・沙織から、3か月ものあいだ寝室を共にすることを拒まれているのだ。
沙織がイタリーの富豪と不貞関係にあることを知り、嫉妬にかられた南原は、部下の津村に極秘の指令を下す。
――沙織を誘拐、凌辱せよ。津村はサディスト仲間の田村が所有するマンションに沙織夫人を連れ込むが、彼女はイタリー人の愛人から手ほどきを受けた、本格的なマゾヒストだった。
縛り上げられ、2人の男にとことん嬲られながら、屈辱感と被虐性の揉み抜かれるような陶酔感に溺れてゆく沙織。
一方、日本人離れした肉体と、気品ある美貌を備えたマゾヒスト沙織に強い執着を覚えるようになった津村は……。
美しい令夫人への厳しい責めと、その転落を描き、谷ナオミ主演で映画化もされた団鬼六の代表作。
著者・団鬼六に師事、季刊官能文芸誌「悦」の創刊編集長を務めた松村由貴による解説つき。