ひとりの好色な男とその愛人が出会った「はじめて」から「名残の一夜」までを描く、愛と性の連作短編集。
〈なんとかならないものかな〉――レコード店店主の吉住が友人を見舞った帰りの電車の中で見かけた、飛び切りのいい女。
白い肌、染めていない髪。清楚で気品があって……、しかし、女には思いがけない秘密があった。
三業地に籍を置く芸者・八千代だったのだ。正体を知り、早速会いに出かけた吉住は、思い描いた通りの八千代の肉体を堪能するが……。
吉住と彼の愛人・絹を主人公に、童貞グループの筆おろし、文学少女の処女喪失から、大きすぎる悩みを持つ男、不治の病に侵された男の最後の願いなど、2人が出会うさまざまな形の愛と性を描いた連作短編集。
純文学作家として何度も芥川賞候補に名を連ねた川上宗薫ならではの、研ぎ澄まされた官能表現が味わえる佳作。
団鬼六に師事、季刊官能文芸誌「悦」の創刊編集長を務めた松村由貴による解説つき。