オトナのパフェは、優しく甘く心を癒やす。
札幌市内の繁華街、高いビルに囲まれた一角に、ぽつんと建つレトロな石蔵があった。そして、そのずっしりと重い扉にはこんな文字が掲げられている。――『パフェバー・紅うさぎ』。そう、ここは知る人ぞ知る、夜にひらくオトナのためのパフェ専門店なのだった。
大学二年生の平牧紅葉は、大学入学の直前に会ったきりの兄・岳人に会うためにここへ来た。というのもこの紅うさぎは、岳人がオーナーをやっている店だったからだ。しかし、肝心の兄は海外出張のために不在。急ぎ兄と連絡をつけてもらう間、紅葉は店長の池口からパフェの試食をすすめられるが、実は紅葉にとってパフェはいい印象のないスイーツだった。なんなら苦手な食べ物、トラウマとまでいってもいいくらいだ。というのもそれは、幼少の頃、両親が離婚したときの苦い思い出に直結している味だったから。
見た目も味も極上のパフェを口にして、紅葉の心はほどけていく。そして、ふしぎな縁で繋がった「紅うさぎ」の人々とともに、穏やかな日々は過ぎていくことに……。北海道を舞台にした、ほっこり癒やしの物語!