「別れられない奇妙なカップル」を描いた第79回直木賞受賞作『離婚』と続編『恐婚』。短編集『花のさかりは地下道で』を収録。
1978年上半期の第79回直木賞を受賞した「離婚」と連作「四人」「妻の嫁入り」「少女たち」を単行本化した『離婚』。その続編ともいえる連作集『恐婚』(「虚婚」「雑婚」「連婚」「風婚」「恐婚」を収録)と、両作品集のはざまに発売された12編の短編集『花のさかりは地下道で』を中心に、ほか単行本未収録短編7編からなる1巻。
『離婚』『恐婚』は、週刊誌ライター羽鳥誠一と元妻・会津すみ子の「別れる決意をしたのに、どういうわけだか別れられない奇妙なカップル」を中心に、彼らを取り巻く人々との愛憎劇を描いた作品集。誠一&すみ子カップルの右往左往ぶりにクスクス笑いを誘われるものの、その根底に行き場のなくなった人間の哀しさが秘められており、軽妙ながらも
色川文学の本質が一本通った連作である。
『花のさかりは地下道で』は、直木賞受賞直後の脂が乗り切っていた時期の短編集で、上野の地下道で出会った娼婦との淡い友情を描いた表題作を含め、雑踏を歩くような楽しさに満ちながらも、不思議な静謐さが漂っている。
解説は、作家の佐伯一麦氏が寄稿。付録として、当巻収録作品「四人」「妻の嫁入り」「虚婚」「星の流れに」「友よ」の生原稿などを収録する。