登場人物が悪党ばかりで、博奕打ち不在という『先天性極楽伝』を始め、阿佐田哲也後期を飾るユーモア・ピカレスク作品集。
登場人物が悪党ばかりというユーモア・ピカレスク作品『先天性極楽伝』をはじめ、お色気狙いのみならず、ギャンブル好きも夜な夜な集まるピンクゾーンで繰り広げられるユーモア・ピカレスク連作『ヤバ市ヤバ町雀鬼伝1』、『ヤバ市ヤバ町雀鬼伝2』という、1980年代後半に書かれた阿佐田哲也“博奕打ち不在の賭博小説”3作を収録。
『先天性極楽伝』は小学生同士で“結婚”したハルとカン子が主人公。ひと癖もふた癖もある面々を巻き込んで、繰り広げられる“三億円争奪戦”! 食うか食われるかの騙し合い、惚れた腫れたの逃亡劇……。「週刊現代」に1984年から1985年にかけて連載された長編ユーモア・ピカレスクロマン。一方『ヤバ市ヤバ町雀鬼伝』は、天才勝負師オレンプを中心に、エイズ問題の影響で不景気な歓楽街を舞台に繰り広げられる、真剣勝負の数々。「小説現代」に1986年から1987年にかけて一話完結型で連作された長編ギャンブル小説である。
解説は、作家・北上次郎。付録として、作家・井上ひさしのエッセイと本田靖春によるインタビュー記事などを収録。