台南を舞台にした表題作等、珠玉の短編5編。
明治、大正、昭和の3つの時代にわたって、詩歌や小説、文芸評論など幅広い分野で足跡を残した佐藤春夫の、珠玉の小説アンソロジー。
表題の『女誡扇綺譚』は、日本時代の台南を舞台に、鄙びた町の姿や、没落豪族の娘の霊との出会いを描いた作品で、作者自ら「五指に入るであろう」と評した幻想的な傑作。
改稿を重ねた渾身の一作『田園の憂鬱』は、田舎に移り住んだものの周囲と溶け込めず、次第に病んでいく文学志望の青年を描く。
他に処女作品『西班牙犬の家』のほか、『のんしゃらん記録』『美しき町』を収録。
『大正幻影』で佐藤春夫を掘り下げた評論家の川本三郎氏が解説。