実父との異様な親子関係を描いた「百」や「復活」、色川文学のエッセンスとも呼ぶべき私小説27編を集めた。
百歳を前にしてもうろくが始まった元軍人の父親と、無頼の日々を過ごしてきた私との異様な親子関係を描いた「百」、「ぼくの猿 ぼくの猫」、「永日」は、人生の凄みを描いた色川文学のエッセンスともいえる純文学作品。これら3作品に弟との長きに亘る交情を描いた「連笑」を含めた短編集『百』で第9回川端康成文学賞を受賞した。一方、「復活」では、父を喪った後、夢の中で父に出会えることを期待する私の夢の情景を描き、「遠景」では若くして亡くなった父の末弟を、遺された手紙から探ろうとする私を描いている。『友は野末に』は、放蕩を繰り返し、奇病や幻視に悩まされ、劣等感や孤絶を感じながらも人恋しさも併せ持つ、無頼と称された作家が遺した、魂をさらけ出す私小説集。いずれも、純文学作家・色川武大のリアルを感じる全27編を一挙収録
解説は、私小説を得意とする作家・佐伯一麦が書き下ろす。付録として「遠景」、「雀」、「虫喰仙次」「奴隷小説」の生原稿、収録作品のモチーフとなった父、弟の写真、作家・安岡章太郎の色川追悼文なども収録する。