残されたわずかな時間――その一言を彼に伝えたかった。
上京して六年。世界的なコレクションにも参加するようになり、モデルとして順調に成長してきた鈴音。しかしその一方で、彼女の身体に潜む病は、確実に彼女の残された時間を刻んでいた。
人生のカウントダウンが始まったとき、人は残りの時間をどう生きるのだろう?
鈴音はそれまでの人生で、もっとも美しくてやさしい場所へ帰ろうと思った。
市川拓司のベストセラーを映画化した『そのときは彼によろしく』の物語世界につながる“それまでの物語(プレ・ストーリー)”を描いた、オリジナルノベル。