宮尾の思春期がモチーフの『春燈』、ミステリー恋愛小説『湿地帯』を収録。付録はドラマ『春燈』の脚本家にエピソードを訊く!
宮尾は30年近い歳月をかけて、自伝四部作を書き上げた。『春燈』はそのひとつで『櫂』の続編にあたり、宮尾自身をモデルとした綾子の多感な思春期を描いている。父の稼業が原因で教師から差別されていると感じた綾子が、父を憎み激しく反抗する姿に宮尾の複雑な心境が窺われ、「もっとも書きにくかった」と述べている作品だ。
『湿地帯』は宮尾が上京する前、38歳の時の作品で、高知新聞に“前田とみ子”のペンネームで初連載をした長篇である。高知を舞台にしたミステリー仕立ての恋愛小説で、異色の宮尾作品といわれている。
付録は『春燈』『藏』のテレビドラマ化の際、脚本を手がけた中島丈博のインタビューを掲載。両親が高知出身で、自身も10歳から高知で育った中島が、ドラマ化の際に見せていた宮尾の素顔を語る。
※この作品にはカラー写真が含まれます。