雑誌連載中から物議を醸した「男性的人生論」、単行本未掲載の「パイプ煙草」など、立原が人生哲学を語ったエッセイ集。
生涯を通して自らのアイデンティティを強く求め続けた立原正秋は、常に「いかに生きるか」を模索し、キリスト教や仏教にも深く心を寄せた。そしてその思索から得た人生哲学をエッセイにも多く書き残している。
「イエスとユダについて」は立原が同人誌「近代」創刊号に発表した、イエスを文化人、ユダを合理主義者として対照させ、ユダの真理に迫った異色のエッセイ。ここでの思索はのちに短編『血の畑』(第3巻収録)に結実しており、彼の初期作品理解の上で必読の一篇といえる。この他、男と女を描き続けた立原の視点を示す「女のうしろ姿」及び『愛をめぐる人生論』、鋭い舌鋒が物議を醸し、連載中に掲載誌が替わった「男性的人生論」、自称喧嘩嫌いがその美学を探る「喧嘩術入門」などと共に、単行本未掲載作品「パイプ煙草」を初めて全集に収録する。全63篇。
付録として武田勝彦氏らによる鼎談、中田浩二氏のエッセイ2篇と長女・立原幹氏が父の思い出を綴る「東ケ谷山房 残像 二十五」など。また特別付録として『愛をめぐる人生論』の生原稿、立原愛用の品々の写真や、孫である立原継望氏撮影の「鎌倉四季の花」(4)を収録した。
※この作品にはカラー写真が含まれます。