韓国の熱気に魅了され、その「路地」に「発情した」中上の韓国ほかアジア関連小説、エッセイ、対談を一挙掲載。
『物語ソウル』は荒木経惟とのコラボ作品。写真は全てソウル市街を撮ったモノクロ。蒸発した夫を探しにソウルに出てきた女は、ヨンドンポの路地に住みつき、やがて反体制派の大物政治家Kの暗殺を企てる義賊・チャンギルに出会う。ベトナム帰還兵らを率いる一党に加わった女はKに接近、だが銃口の先にはその側近とおぼしき夫の姿があった。引き金を引いた彼女はその後、仲間に殺されたチャンギルに代わって一党を率いる女義賊となるのである。
『輪舞する、ソウル。』は、篠山紀信とのコラボによるソウル版「シノラマ」(シノヤマによるパノラマ写真)。パンソリ、仮面劇などの民俗芸能を取材した1978年の韓国の旅(『風景の向こうへ』参照)以来、この国の人々の醸し出すアジア的熱気に魅了された中上は、1981年にはソウル特別区ヨイドのアパートで単身生活を送ってさえいる。1985年刊行の『輪舞する、ソウル。』は、その成果とも言える韓国・ソウル論でありホットな実見録。彼はここで、その「路地」に「発情した」とさえ語っていた。
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※この作品にはカラー写真が含まれます。