雪深い越後塩沢で紬を織る未亡人の元へ通う男との逢瀬の日々を描く『紬の里』ほか、“盟友”作家・小川国夫との往復書簡も収録。
雪深い越後の地で、紬を織る女の秘めた情熱と、彼女に惹かれ通い続ける織物研究家のエゴイズムが次第にかみ合わなくなっていく様を描いた『紬の里』。二人の心理の揺れが、背景をなす雪国の自然や風光に投影され、叙情的に描かれた作品。立原の親友ともいえる作家・小川国夫とおぼしき人物が登場する『合わせ鏡』は、異母妹を愛してしまった主人公の苦悩と放悉の日々を描く。親友・小川国夫との7年におよぶ往復書簡『冬の二人』全編と、二人の対談「中世への接近」も収録。黒川能を観に鶴岡へ行った男女が、雪のなかで空を駆ける馬の蹄の音を聞く『雪のなか』、家の向かいの山を切り崩す建設会社の労務者との性愛に溺れる人妻を描く『山肌』を収録。
付録として長女・立原幹氏が父の思い出を綴る「東ケ谷山房 残像 十四」など関連エッセイ3作収録。特別付録として『紬の里』『合わせ鏡』生原稿のほか、小川国夫から立原への書簡を収録。「写真でたどる立原正秋の軌跡」(5)では、親友・小川国夫とのスナップ写真を掲載。
※この作品にはカラー写真が含まれます。