◆蜜に群がる虫のように、女たちは彼の香水を求めた。その肌に唯一無二の香りを持つ女、エヴァ以外は。◆孤独な若妻グレイスのもとに、パリから遺言状が届く。彼女はエヴァ・ドルセーという心当たりのないフランス人女性から、莫大な遺産の相続人に指名されていた。弁護士ティソと共に故人の意図を探るグレイスは、パリ左岸に立つ、廃屋のような香水店に辿り着く。エヴァはある天才調香師のミューズだった。奔放な生き様、痛すぎる愛、そして生まれた幻の香り……それは鼻腔を経てグレイスの記憶をたぐり寄せ、悲愴な過去の秘密を呼び覚ましてしまう。1920~50年代ニューヨーク、パリ、モンテカルロ――狂騒の時代と史実を基にテッサロが描く、デカダンな愛。