小田原で能楽宗家を継ぐ主人公と、舞台に限界を抱き、女に溺れていく夫を巡る愛の変転と破滅を描いた『舞いの家』を収録。
『舞いの家』は、能楽室町流の宗家に生まれ、その重みを背負い、胸深く情熱を秘め宗家を守ることに必死に生きる綾と、役者として舞台に限界を感じ、その渇きを癒そうと女に溺れていく夫・道明の二人を巡る愛の変転と破滅を、美しい箱根の風景とともに描き、美と狂気の世界を構築した長編。綾を星由里子、道明を田村高廣が演じ、NET系列で昭和47年1~3月にTVドラマ化された。他、夫の間に子が出来ない妻が、山北の工房で恩師の子を身籠ったものの流産させてしまう『のちのおもいに』、湯河原の保養所で出会った人妻との逢瀬を描く『石楠花』、小田原近郊に住む僧侶との性に溺れた新橋の芸者が思い出を語る『仮の宿』、中年男と性愛にのめり込む女を描く『埋れ水』を収録。
付録として長女・立原幹氏が父の思い出を綴る「東ケ谷山房 残像 十二」など関連エッセイ2作収録。「写真で辿る立原作品の世界」(8)では、『舞いの家』等の作品の舞台となった箱根、小田原エリアを幹氏の書下ろし原稿と継望氏撮影の写真にて紹介。
※この作品にはカラー写真が含まれます。