念願のシベリア鉄道「ロシア号」に乗車した宮脇が、ついに究極の鉄道紀行を綴る。東南アジアでのほのぼのとした乗車記も収録!
1983年初刊の『シベリア鉄道9400キロ』は、著者が前年の春に担当編集者とナホトカからハバロフスクを経てモスクワへ至る汽車旅の記録である。当時はベルリンの壁が崩壊前で、ロシアでなくソビエト連邦だった。旅の中心は8531キロを6晩7日かけて「ロシア号」でシベリア鉄道を乗り通す部分だが、始発駅のハバロフスクに辿り着くまでの道中記も興味深い。走る車窓で注目したのは、線路脇のキロ程を表すキロポストだ。モスクワが近づくにつれ、その数を減らしていく様子が長い汽車旅の抑揚となっている。同行編集者をはじめ乗客や従業員たちの人間模様の描写も実に面白く、鉄道を中心としたひとつのコミュニティを垣間みせる作品だ。
『椰子が笑う 汽車は行く』は、1982年にフィリピン、マレー半島、台湾、インドネシアの鉄道を旅した乗車記である。なかでも「皆既日食ツアーは楽し――ジャワ島」は、鉄道にはとりあえず乗るものの文章のクライマックスは皆既日食の観測で、他の作品とは筆致がいささか異なる。タイトルは宮脇自身の案で、稿末の《長い棒の先に「笑」という字を乗っけると、椰子の木そっくりになる。》という一文が同書のイメージを表しているようだ。
付録:宮脇俊三アルバム、連載『最長片道切符の旅』自筆原稿 など2点
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