1980年に刊行された『台湾鉄路千公里』は、宮脇俊三の海外鉄道紀行の第一弾。この年、一週間をかけて乗り通した台湾の鉄道は、南部の枋寮と台東間がまだ未開通で台湾を周回することはできなかった。この海外の鉄道紀行は担当編集者の同行はないものの、ひとり旅ならではの鉄道乗り歩きを楽しませる内容であろう。
宮脇が台湾を訪れた1980年。《長い鉄橋の場合は両端にコンクリートづくりの監視所があり、銃剣を構えた兵隊が立っている。》の記述は、まだ戒厳令下にあった時代を偲ばせる。晩年に好んで嗜んでいた紹興酒も、文中には《台湾の酒に紹興酒というのがあることは知っていた。何度か飲んだことがあるが》とあるように、まだ馴染みが少なかったことを著しており、初期の作品であることを伺わせる。なお、枋寮―台東間の未開通部分は1992年に開通し、その鉄道紀行は、『豪華列車はケープタウン行き』に収録されている。
『汽車旅は地球の果てへ』は、雑誌に掲載された「アンデスの高山列車」「人喰鉄道・サバンナを行く」「フィヨルドの白夜行列車」「ジブラルタル海峡を渡る」「ナイル河の永遠」「オーストラリア大陸横断列車」の6編を収めたもの。巻頭の「アンデスの高原列車」は、当時の旅客列車で到達できる地点として世界最高であったペルー中央鉄道の4783メートルの乗車記が圧巻である(現在の最高地点は、中国の青蔵鉄道の5072メートル地点)。
付録:宮脇俊三アルバム、連載『最長片道切符の旅』自筆原稿 など2点
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