ドストエフスキー作品に着想を得た『日本の悪霊』に、戦争に運命を翻弄された男を描く「堕落」「散華」等を収録。
秘密革命組織が起こしたネチャーエフ事件を素材としたドストエフスキーの作品『悪霊』に着想を得た『日本の悪霊』。
敗戦に運命を翻弄された男を描く「堕落」、「散華」、小編「革命の化石」を収録した一巻。
『日本の悪霊』は、戦後革命の挫折を素材として、「文藝」1966年1月号から1968年10月号に6回にわたって記された作品。
逃亡生活に疲れた犯罪者・村瀬は、「つまらぬ犯罪行為」で収監される。
担当刑事の落合は村瀬に“惹きつけられた”ように過去の捜査にのめり込んでいくのだった……。
留置場での実態を生々しく描く様は同じドストエフスキーの作品『死の家の記録」を彷彿させる。
その他、かつて満州建国に奔走した過去を持ち、現在は混血児養育施設の園長を務める青木隆造が、その“虚しさ”から公金流用の疑いをきっかけに失踪し町を彷徨っていく作品「堕落」、電力会社の鉄塔建設予定地にある孤島に一人暮らす元右派の思想家だった中津老人の孤独な死を描く「散華」等を収録する。
解説は、文芸評論家・立石伯氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
付録として『日本の悪霊』「堕落」「散華」の生原稿等を収録。
※この作品は一部カラー写真が含まれます。