自ら指揮したストの敗残者となった組合活動の指導者の“身の破滅の過程”の独白で描かれる『我が心は石にあらず』と、大阪・釜ヶ崎を背景にした自伝的な小編「我れ関りを知らず」を収録。
『我が心は石にあらず』は、雑誌「自由」1964年12月号から1966年6月号に連載され、のち1967年に単行本が刊行された。
主人公・信藤誠は精密機械メーカーの研究所員かつ労働組合委員長としてエリート街道を歩んでいる一方で、妻子ある身でありながら組合活動で知り合った久米洋子と不毛な愛を続けていた。
運動が緊迫するなか、久米が妊娠したことで、怪文書が出回り“エリートの不倫スキャンダル”として信藤は窮地に追い込まれていくのであった……。
日本の高度経済成長期に、組合活動の指導者の“身の破滅の過程”を描いた同作は、その後ラジオドラマとして、1964年12月1日にNHKラジオで放送された。その台本も併録する。
自伝的な小編「我れ関りを知らず」は、雑誌「VIKING」第165号(1964年8月)に発表されたもの。
解説は、文芸評論家・小林広一氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。
付録として「我れ関わり知らず」の生原稿等を収録する。
※この作品は一部、カラー写真が含まれます。