高橋和巳が自身の青春の総括として、学生運動で傷ついた世代の10年後の「生」を辿った長編『憂鬱なる党派』等で構成する一巻。
学生運動で傷ついた世代の10年後の「生」を辿った長編『憂鬱なる党派』と、自身が育った地域(貧民街)を舞台にした“高橋和巳文学の原景”を鮮烈に描いた短編「貧者の舞い」を収録した一巻。
『憂鬱なる党派』は出世作『悲の器』より早く、雑誌「VIKING」108号(1959年8月)から連載開始されるも、122号(1960年10月)に第七章(一)まで11回分連載された後中断、丸5年放置された後、1965年11月に完全版として全十六章建てで単行本として発売となった。
この長編は、高橋自身が属した「京大文芸同好会」(後に「京大青年作家集団」)での体験が下地となって記されている。
主人公・西村と同様に、高橋自身も無期停学処分を受けた学友のために処分撤回のハンストに参加しており、まさに自身の青春の総括ともいえる作品。
当巻では、『憂鬱なる党派』の完全版はもちろん、連載中断となった「VIKING」連載の初出版も併録する。
「貧者の舞い」は「世界」1964年12月号に初出掲載された短編。その小説の原型が、1955年の「文學界」新人賞に応募したものだといわれている。
同年の新人賞は後の芥川賞作品『太陽の季節』(石原慎太郎)だった。
解説は、文芸評論家・黒古一夫氏が務め、解題は和己巻の監修者を務める作家・太田代志朗氏が担当。付録として『憂鬱なる党派』の生原稿等を収録する。
※この作品は一部カラーが含まれます。