忠死よりも全生を大切にした悲姫の物語。
時は江戸時代、元禄年間。
広島三次藩から播磨赤穂藩の浅野内匠頭に輿入れした阿久利は呆然としていた。
内匠頭が江戸城中松の廊下で、勅使饗応の指南役である高家筆頭・吉良上野介へ刃傷に及び、切腹となったのだ。
国を失った藩士たちは、生き残った吉良にはお咎めなしという将軍徳川綱吉の裁きに抗議すべく、籠城討ち死に、もしくは全員切腹と、真っ二つに割れていた。
さらに、主君の無念を晴らすべく、堀部安兵衛を筆頭に、仇討ちを志す者たちも現れる。
一方、夫の遺言もあって、仇討ちも籠城も、切腹も望んでいない阿久利(瑤泉院)は、忠死を覚悟する浪士たちを思い止まらせようと、綱吉の生母桂昌院へ御家再興の嘆願をはじめる。
国家老だった大石内蔵助も、赤穂遠林寺の僧祐海を通じて、周旋を図る。
だが、阿久利と内蔵助の努力も虚しく、御家再興はならず、吉良邸に討ち入る浪士たち。
吉良の首級を挙げた「義士」たちの助命を乞うべく、阿久利は再び力を尽くすが……。
広島県三次市出身の大人気時代小説作家が筆を揮う、新しい「忠臣蔵」!